複式簿記

現金と小口現金の違い

現金と小口現金の違い

現金と小口現金とは、ともに紙幣や硬貨、つまり貨幣そのものであり、いつでも支払手段として使用可能であるという点で全く同じであり、性質上違いはありません。

しかし簿記上、現金と小口現金は区別して処理します。ではなぜ簿記処理上、現金と小口現金を区別しているのかといいますと、それは現金と小口現金とを分けて管理するほうが現金の管理上都合がいいためです。

したがって現金と小口現金は管理上区別されているだけですから、最終的に財務諸表を作成する際には金額を合算し、貸借対照表の流動資産の部に現金及び預金等といった科目で記載されます。

 

現金と小口現金とを分けて管理する理由

通常企業は警備上や安全管理上のため、現金を極力社内には保管しないで銀行に預金しておきます。しかし銀行預金は安全に保管しておくにはとても便利ですが、日常のこまごまとした支払の決済を行うには不向きです。(その都度銀行振込または預金引出が必要なため。)

そこで、会議における茶菓子代や立替経費の精算といった、日々発生する小額な支払いに備えてある程度の現金を会社の金庫に保管しておいたほうが便利です。その会社の金庫で保管しているお金が現金です。

しかし、銀行預金だけしか持たないより便利とはいえ、従業員の立て替えた交通費の精算やお茶代などこまごまと支払のつど金庫を開けて出金を行い、その都度出金伝票を作成するというのは面倒で、かつ、あまり頻繁に金庫を開け閉めするのは安全管理上、あまりよろしくありません。

そこで金庫に保管していた現金の一部の管理を小口現金の担当者(用度係)に任せ、この用度係が管理する小口現金によって日常的な小額の経費の精算を行うようにしたものが小口現金です。

 

海外では

 小切手という決済手段が普及

日本では全く普及していませんが海外では小切手という決済手段が古くから結構普及してるようです。アメリカなどではある意味文化として小切手決済が根付いているようです。これは現金を手元に置いておくことのセキュリティ上の問題や現金管理の煩わしさを解消する目的があったのではないかと思います。他にもいろいろ理由があるようですが。

ちなみに海外の銀行のATMには小切手を投入することができる投入口があったりします。そこに小切手を投入することで後日預金口座に入金される仕組みになってます。使ったことがありまして確実に入金されるか不安でしたが結構面白いですね。

 

小口現金のイメージ

現金を金庫の中にある帯つきの札束とイメージし、小口現金をクッキーの空箱に入っている千円札や硬貨とイメージしてみて下さい。

たとえば、営業さんが立て替えた交通費750円を精算するとします。そして経理担当者が営業さんが立て替えている交通費を「現金」で支払うとすると、わざわざ金庫を開けなければなりませんし、現金は管理を厳密に行う必要があり、毎日帳簿残高と実際有高を照合すべきですから、この現金の出金の会計処理もできるだけ早く行うわなければなりません。

またさらに交通費の処理がもう1件300円あるとするならば、それも別に現金を支払った日にて現金の出金の会計処理をしなければなりませんから会計処理としては次のようになります。

現金支払い時の日付で
旅費交通費 750/現金 750

現金支払い時の日付で
旅費交通費 300/現金 300

これに対し小口現金で営業さんが立て替えた交通費750円を精算するとするならば、小口現金を管理している人が営業さんにクッキーの空箱に入っている小口現金から750円を取り出し営業さんに手渡します。

そして営業さんから受け取った領収書をまた別のクッキーの空箱にでも入れておいて、月末あたりにまとめて領収書を見ながら経費の発生の会計処理をすればすみます。

またさらに交通費の処理がもう1件300円あるとしてもそれも合わせて一緒に処理すれば済みます。もちろん小口現金の精算をする日の日付で。この場合の会計処理は次のようになります。

月末などの小口現金を精算する時点の日付で
旅費交通費 1,050/小口現金 1,050

このように、簿記の学習上小口現金を上のようにイメージすれば小口現金の処理なんてなんということはありません。そして小口現金を補給するタイミングとして「インプレストシステム(定額資金前渡制)」や「即日補給」などがありますが、そういう用語にも全くこだわる必要もありません。

問題文を読んでいつの時点で小口現金を補給すればよいのかの読みとりさえできれば大丈夫です。それさえできればなんの問題はありません。

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